オムニバスオーディオドラマ「睡蓮」

 「不思議」・「静」を主題に様々な世界観で贈る物語。

 
 
 
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制作日誌 


          Story

 
 木々の噂話に耳を傾ける。
 いつものように水と戯れる。
 綺麗な三日月を見上げる。

 最初は独りに思えていた世界も、精霊達の存在に気づいてからは寂しくなくなった。
 どうして私だけがこの姿で世界に残ったのか、
 それは神様にしか分からないのかもしれない。
 私の命はある時から老いることを拒み、永遠のものとなった。
 死を望んでいた私にとっては、とても苦痛な孤独。
 だけど今は楽しいと思っている。良かったと思っている。
 自然という生命に出会えたことが救いになった。

 彼も、精霊達と話せたのだろうか?
 ふと浮かんだ疑問だが、答えを持つ相手がいない為問うことが出来ない。
 そういえば「神のみぞ知る」と彼は言ったことがある。
 自分が神様みたいなものでありながら彼は神様を信じている素振りをしていた。
 真意なんて分からないけれども、彼の言葉を再び借りるなら、
 彼が精霊と話せたのかも、私が何故生きているのかも、
 全ては神様しか知らないことだから頭の中でいくら考えても仕方が無い。
 たった一人の人間が息をする世界だってあってもおかしくないのだ。


 ざわっ、と突然木々が葉を揺らした。
 水達が波紋を震わせ、何かの訪れを告げた。
 それを月は静かに見下ろし、照らしていた。

 「何が来たの?」
 心で話す精霊達に、つい声を出して問う。
 久々に発した音はあの頃よりも少し低い様な気がする。
 自分の音を聞いたのは何十年ぶりだろう。
 日を数えているわけでもないのに、そんなことを思っていると、ぴちゃん、
 と水が私を呼んだ。
 今まで誰一人として訪れなかったこの場所に、自分達以外が来ようとしている。
 なのに上の空とは何事だと軽い叱責を受け、改めて空を見上げた。
 行き場なく彷徨う風に問われて私は頷く。すると強い風が吹き抜け、
 空彼方から彼らを導いた。

 珍しい訪問者達は、私と同じ人間だった。
 けれど彼らは皆”身体”を失っていた。
 魂だけになりながらもどうして、何の為にここへ来たのかは分からない。
 だから私は、そっと手を伸ばす。
 特に拒む理由もないから、
 と心で理由をつけながらも久々の人間に興味を惹かれていた。

 その内一つが私の手に触れると、陽気な女性が語りかけてきた。
 『初めまして、綺麗な女の子』
 「貴女は誰?」
 『……誰だろう、真っ黒な海しか思い出せないや』
 「どうしてここに来たの?」
 『ごめんね、それも私には分からない。
  でもね、私達を見つけてくれたのは貴女が初めてだよ』
 その言葉に私は黙ってしまう。この世界の人間はもう私しかいないはずで、
 なのに彼女は他の人間にも会って来たような口ぶりで。
 一瞬の戸惑いはあったけれど私は知っていた。
 世界は一つじゃない。

 『いろんな世界を周って来たけど、私も皆も少し疲れちゃったんだ。
  目的もなくただ彷徨ってる
  ようなものだからね。でもやっと私達と話せる貴女に出会えた……。
  唐突でごめんなさい、一つお願いを聞いて欲しいんだけどいいかな?』
 「私に出来ることなら」
 『ありがとう』
 「何をしたらいい?」
 『私達の記憶を取りも出させて欲しいの。
  魂を覗けばば人生の一部に触れられると思う。そうすれば記憶も戻るかもしれない』
 「えっと……」
 『ほら、最初は何事もやってみなくちゃ。
  考えるよりも動くが先。まずはあの人の物語を、覗いてみましょう?』
 
 
風が囁いた。面白くないと。ねえ、彼らは何者なのだろうか?
裏切り者か勇者か。
水面に映るは一つの物語。
様々な魂の断片。
彼を待つ間の暇つぶし。

 


          Mminutes

 
 2015.03/09   CDページ更新 通販HPへのリンク追加
 2015.03/06   「自称探偵」スタッフ欄訂正
 2014.12/21   アンケートページ設置
 2014.12/21   「神の力を持つ女」公開
 2014.12/20   「盲目の男」音源差し替え
 2014.12/13   「盲目の男」公開
 2014.12/05   「地球からのメッセージ」公開
 2014.11/30   CD情報解禁
 2014.11/25   「紙芝居 行脚丸」公開
 2014.11/15   「交差点」公開
 2014.11/07   「自称探偵」公開
 2014.10/31   「黒い海」公開
 2014.10/24   「エメラルド」公開
 2014.10/13   「絵描き」公開
 2014.10/07   サイト開通  「587番」公開
 2014.07/21   ティザーサイト開通  「懺悔」公開





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